行政書士試験は独学でいけますか?

行政書士試験を独学で合格することができるか?
これは難しい問題です。

基本的に法律系資格試験の場合、仮に、合格するのに10の力が必要だとしましょう。
最後の部分、7〜10くらいまでは結局、自力でしか身につきません。
ここは自分で努力するしかない部分です。

ただ、1〜6までの部分、この部分に関しては、予備校へ行ったほうが早いです。
要するに最初の部分、歩行補助器がないと歩きづらい部分が、確実にあります。
それは勉強の仕方であったり、考え方であったり、鳥瞰的な物の見方であったり、そういうツール的な部分が、どうしても独学だとなかなか身につかないものです。

もちろん最初からそういうツール的な部分を持っている人、例えば法学部出身であるとか、他の法律系資格試験の受験勉強経験がある、という方であるのなら、受験予備校に行く必要性は薄く、それだったら独学でやったほうが安くて早い、といえるでしょう。
また、他の学問をしっかり学んでいて、そういうツール的要素の存在にすぐに気がつける人、そういう人であるなら、やはり独学でも可能かもしれません。

ただし、法学部の物の考え方は、やはり少々独特なのかも、とも思います。
例えば法学部だと
「学生が立法論をやるのは百害あって一利なし」
という認識があって、基本的に六法の解釈に終始します。
生の社会的事実を社会的経験の少ない学生に扱わせることは、彼の人格形成にとって有害でしかない、と考えています。
この価値観はものすごく正しい価値観だと僕は思っていて、だから社会学部あたりがやってることを見ると、言ってる内容もさることながら(憲法をちっとも勉強してない社会学部の人間が憲法を論じるのは止めて欲しい)それ以上に教育論として不愉快だったりします。
社会学部は学生を育てていないのでは?

このあたりの価値観はあまり理解されないですね。
ただ、これは行政書士試験でも言えていて、基本的に法解釈学であることからは外れないんですね。
法解釈の中で、社会的事実を取り込んでいきます。
このバランス感覚、これは他の学問にはあまりない部分だと思います。

独学で陥りやすいのは、こうした独善・独りよがりで、そこから免れ得るかどうかは個人の資質の部分もありますが、訓練に拠るところも多いでしょう。
また、そのバランス感覚に面白味を見いだせるか、というのもなかなかに難しいように思います。
ある種の人間には「単なる保守性にすぎない」、と揶揄されるでしょうし。
そういうところに陥ると、なかなか抜け出せなくなります。
(最終的に受験評論家になってしまう人はけっこういます。それもまたある種の独りよがりです)

個人的には、他の資格試験を受けていないのであれば、受験予備校の利用を薦めます。
独学を薦めないのは正直責任の取りようがない、という消極的理由もありますが。
が、なんだかんだいっても、最初の1〜6までは受験予備校に行った方が早い。
これは受験予備校に通う大きなメリットです。

また、現実問題として、記述式の準備に関しては、受験予備校に行かないと難しいでしょう。
記述式対策で市販されている本に、良い本は見当たりませんでした。
また、通学コースであれば受験仲間もできます。
さらに、受験制度改正にもスムーズに対応できます(独学だと情報集めが面倒だったりします)。
通学が無理、あるいは通学はしたくない、という人にも、ほとんどの予備校が通信講座をもっており、環境は整っているといえるでしょう。

独学する場合は?

受験予備校には一切頼らない、通信講座も使わない、独学でやる、というのはあまりオススメしないのですが、どうしても、という方のために、いくつかアドバイスをしておきます。

 とにかく民法が勝負所!
行政法関連・憲法・一般知識あたりは、独学でもなんとかなります。
ただ、それだけだと160点くらいで止まります。
民法の傾向・対策のページにも書きましたが、結局、民法です。
民法の配点36点を取りに行かないと受かりません。

そこでどう勉強するか。
民法の対策・傾向のページにも書きましたが、民法を独学でやる場合、東京大学出版社の民法1〜4(内田貴)が必須になります。
予備校へ行く場合と違い、薄い本では足りなくなります。
ここがかなり大きなヤマになるでしょう。

 受験情報を集めろ!
独学でやる場合、受験情報を自分で集める必要があります。
受験制度改革はもちろんですが、受験科目の法律改正(商法・会社法は要注意)、基礎法学に出そうな制度改革、一般知識に出そうなトピックス、このあたりを自分で集めなければなりません。
立ち読みでもいいので月イチの受験雑誌は軽く目を通しておく(重要改正があったら買う)、新聞などで主要ニュースは押さえておく、こうした工夫が必要になります。
ついでに一言、一般知識の過去問は、先に一通りやってしまうのがコツです。

 精神論
と、銘打ちながら、精神論的な偉そうなことを論じるのが嫌いなので書きません。
大体あれは人によって違います。
僕なんか体が弱いのです。体が弱い人は体が弱い人の精神論なのです。
そんなもの聞いたって仕方がないのです。
が。
が、どうやって継続して勉強していくか、あるいは問題との向き合い方、そうしたことにも結局は種々工夫が必要です。
そういうのもテクニックなんですよね。
スポーツとか学問とか、何かを通してそういう姿勢が身についていれば、独学で行くことも可能になるでしょう。
ここもかなり大きな要素です。

だが伊藤塾だけは薦めておく

あと一点、独学する場合でも、伊藤塾(資格受験予備校のなかでは早稲田セミナーと並んでレベルが高いところです)だけは検討してみても良いか、と思います。
平成22年現在の情報で今後どうなるかは分かりませんが、現時点では、伊藤塾のみ講座の科目選択ができるようです。
伊藤塾のサイトの、行政書士講座一覧から
行政書士合格講座 単科生
を探してみてください。
民法だけなら4万円前後です。
ボチボチ妥当な額です。
伊藤塾が近くにあるなら、それだけ通ってみてもいいですし、通信講座もありますので、民法だけ伊藤塾にお願い、というのはアリだな、と思います。